工匠からのお便り
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松戸市、市川市、宮大工が手掛ける注文住宅・古民家再生の工匠です。
皆さんこんにちは。
「埋木」という大工の技術をご存じでしょうか?
過去のブログでご紹介していますので、そちらも読んでみてください。
過去ブログ→「大工の知恵と粋な遊び心『埋木』
実際作業しているところを見ることができたので埋木の種類や意味を作業風景と共にもう一度お伝えしたいと思います。
大工が施す技術の中に「埋木」という物があります。建物の構造と建築全体の把握を担う大工が、こんなにも小さな場所で魅せる埋木に心惹かれてしまうのはなぜだろう。大工の粋と遊び心。その奥に日本人の精神と繊細さが隠された加工技術だからではないでしょうか。
「埋木(うめき)」とは、木材にある節(ふし)や割れ、腐れ、あるいは加工時の彫り間違いなどの欠損部分に、別の木片をはめ込んで修繕する伝統的な大工技法のことです。
単なる「穴埋め」ではなく、木の美しさを損なわずに、まるで最初から傷がなかったかのように仕上げる、時には文様のように何かを模ってデザインのようにみせることもある、職人の高い技術と美学が詰まった作業です。
木には幹から枝に分かれる部分が存在します。製材した時に枝があった部分が模様のように現れます。これを「節」と呼びます。節は状態によって、大きく分けて5つの分類に分けられます。
枝が生きているうちに幹に取り込まれた節です。
特徴: 節の組織が周囲の木材としっかり結合しており、抜け落ちる心配がありません。
現場での扱い: 構造材(柱や梁)として使う分には強度的にも問題なく、天然木らしい味わいとして好まれることも多いです。

枝が枯れたあとに幹に取り込まれた節です。
特徴: 周囲の組織とつながっていないため、節の周りが黒ずんでいたり、乾燥すると隙間ができたりします。
現場での扱い: そのままにすると見た目が悪く、また隙間から水が入る原因にもなるため、ここで**「埋木(うめき)」**を施します。
死節が乾燥や加工の衝撃でポロリと抜け落ちてしまい、穴が開いた状態です。
特徴: 完全に貫通した穴になっていることもあります。
現場での扱い: 住宅の化粧材(目に見える場所)では致命的な欠点となるため、同じ大きさの木片を叩き込む「節埋め」が必須となります。

節の部分が黒っぽく腐食し、柔らかくなったりボロボロになったりしている状態です。
特徴: 放置すると腐食が周囲に広がる恐れがあります。
現場での扱い: 腐った部分を完全に取り除き、健全な木材で大きく埋木を施すか、構造的に重要な場所であればその木材自体の使用を控えます。

枝が斜めに切られた際に、節が細長く「流れた」ような模様になっているものです。
特徴: 木材の表面に細長く現れるため、視覚的に目立ちます。
現場での扱い: 強度的に弱くなる傾向があるため、力がかかる場所には向きませんが、意匠(デザイン)としてあえて使う場合もあります。
美観の向上: 表面に目立つ「死に節」や傷を隠し、木目を美しく整えます。
耐久性の確保: 材自体の穴を埋めて強度を保つことや、割れや穴から水分が入り、腐食が進むのを防ぎます。
精度の修正: 伝統建築の複雑な「継手(つぎて)」や「仕口(しぐち)」で、わずかな隙間が生じた場合に微調整として行われます。
その場の状況やその材木が使われる目的によって大工が行う埋木は、パッと見ただけではどこを直したか分からないほど精巧なものであったり、違う色味の木材を当てたり、型を作ってはめ込んだりと様々です。
目立たないよう自然に仕上げたい時は、本体と同じ種類の木(共木)を使い、色を揃えて、杢目の流れや節の位置を合わせます。
埋木はそんなに時間をかけずに、パパっと施される図面に載っていない大工の粋な技です。

「この板を使うって言うから、きれいにしてあげようと思ってね。」と言ってさらっと作業を始めていました。
ちょっと考えて杢目を見て、後は感覚的な感じに見える作業です。

傷んでしまった節を切り抜いて、違う木材のしっかりとした節を合わせています。

トリマでだいたいの穴をあけたら、鑿を使って周りを整えます。ここが木と木をぴたりと合わせるミリ単位の作業!
というほど神経質でもなく、コンコンと軽快に作業を進めるベテラン大工の手仕事。


材を傷つけないように、他の木を当てて玄翁で水平に叩き入れます。

鉋などで表面を整え、きれいにふき取って完成です。

埋木の中には、木の割れが広がらないように、蝶々のような形(リボン形)の木を割れ目をまたぐようにはめ込む物があります。そのような埋木を「千切り」と言います。これは補強だけでなく、美しいデザインアクセントにもなります。

無節(むぶし)特選上小節(とくせんじょうこうぶし)などと分類される、節のない高級木材もありますが、自然の中で枝を巡らせ育った木も木材となって、たくさん流通しています。枝打ちの技術が今ほど発展していなかった頃は、節のある材料の方が多かったはずです。そういう材料を無駄にせず、「今ある命を繋ぎ、傷さえも景色に変える」という精神が、日本の埋木という技法を世界でも類を見ない芸術的なレベルまで押し上げました。
木と向き合う大工達が、木に対する感謝から優しさと工夫と知恵で生みだし、誰からともなく受け継がれてきた大切で美しい技術の一つです。図面にも施工計画にも入らない納期延長の理由にも手間にも入らないかもしれない「埋木」という加工技術。これを大工がさらっとやってのけるのであれば、粋で贅沢な世界です。
木も人間と同じで、一つひとつに個性があり、同じものはありません。
『死節』や『抜け節』も、職人が丁寧に『埋木』を施すことで、その木にしか出せない唯一無二の美しさに変わり、数十年後、数百年後と残っていくのです。
京都にある西本願寺の御影堂・阿弥陀堂にはいろいろな形の埋木があって、見ることができるそうです。どんな人がどんな気持ちで作業したのだろうと思いを巡らせながら参拝するも味わい深いものです。
外部リンク→西本願寺(お西さん)
私たちの作業場でも、機械で整えたあとの仕上げとして、職人たちが日々こうした『粋』を刻んでいます。
工場見学では、実際の作業を間近で見ていただくことができます。ぜひ、本物の木の呼吸を感じに来てください。
千葉県松戸市に本社工場を構える工匠より、社寺建築の特殊な加工風景をこれからもお伝え出来たらと思います。
工場の「真剣さ」「集中」「和やかさ」「厳しさ」「緊張」「楽しさ」などの空気感も一緒に伝わると嬉しなと思います。
工匠は、千葉県松戸市・市川市を中心に
自然素材を活かした古民家再生・リノベーションを専門的に手掛けております。
また、お客様のこだわりを実現する注文住宅も可能です。
いつまでも丈夫で美しく、愛され続ける住宅をご提供いたします。
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