工匠からのお便り
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松戸市、市川市、宮大工が手掛ける注文住宅・古民家再生の工匠、広報担当です。
皆さんこんにちは。
大型の機械音が響く第一工場とは違って、静まり返った第二工場。朝から一人、ひたすら同じ作業を続けている大工がいます。古民家修復で使う外壁の木材に塗装を施す仕事です。木材の長さ分を行ったり来たり何度も往復しています。施主様のご依頼通りの色が出るよう調整しながら重ね塗りを繰り返す作業です。

彼の持つ雰囲気は不思議で、何か一つの作業に窮しているような表情をしているのですが、そのぴりついた範囲は案外狭くて、ちょっと話かけると、さらっとそれを割いて笑ってくれます。すーっと広げた敷物の傍らに座らせてくれるような、人を緊張させない雰囲気を持つ人です。ぐるっと見渡したぐらいでは、職人界に見ない感じの人。
「ディズニーで1日中遊んで、2万歩なんですよ。僕、この作業で既に2万5千歩いってるんですよ。」
その時、時刻は14:00。ディズニーだったらまだまだこれからという時刻。
「大変だね」って話しかけたら、そんなふうにふわっと笑わせてくれるんです。その問いかけを受け入れるために作ってくれたこの楽しさの中には、愚痴も不満もありません。「大変だね」と声掛けした私を一旦は否定しない、その柔らかさがとても独特です。そうやって、とても自然に会話を始めてくれるので、お邪魔ですよねと思っているこちらはホッとします。

「同じ作業はどうですか?」
「僕、単純作業とか、そんなに嫌いじゃないです。」
「そうなんですね。」
「繰り返しの作業でも、やってる中でこうしたら早いかなとか、このやり方がいいかなとか、考えるんです。そういうの嫌いじゃないです。」
「今の作業も?」
「はい、始めた時よりもずっと早くて奇麗にできていると思います。」
どうだ!!と見せつけるでもなく、押し付けるでもなく、どこか楽しそうな軽やかさです。
「そこに積みあがった材料全部やるの?」
「そ~なんですよぉ。これ終わりますか?」
ちょっと真面目になったやり取りを、もう一度、ふんわりとほどくような物言いをします。膨大な作業量の中で、話しかけていることを許してくれるような雰囲気をくれます。この人が一度広げた敷物は、どこまでも広がって、やがてたくさんの人が座るんだろうなと思います。

「二年経ちますが、墨付けとかやってみたいと思う?」
「思います。でも、もしかしたら僕は苦手かもしれないです。」
「そうなの?」
「僕、先走っちゃうところがあるんです。で、失敗してよく𠮟られます。そういうところを気を付けないとです。」

「でも、立ち止まって動けなくなるよりいいのでは?」
「そうですかね。わからないです。」
「怖がらずに先走れるって、武器になるんじゃないですか?」
「いや。間違えて、叱られて、でも助けてもらってます。動く前に考えなきゃいけないのに。」
柔らかい印象の中にも職人としての苦悩がいつもあるのでしょう。でも、悩みはどんどん強みにかわるから、今は悩み続けたらいいのではないかと、むしろうらやましいほどにそう思います。前のめりに進んでいける力は、強みに変わることもあります。間違えを正されて叱られても、彼は、厳しい棟梁の中の心の変化や、自分に向けて譲り渡された深さとか温度みたいなものを感じ取れる人なのだと思います。助けてもらっているといつも胸に刻める人なのです。

そして、一緒に切磋琢磨し働く同期たちの事を話してくれました。その言葉にはどれも仲間への心からのリスペクトが感じられます。自分にはないけど、本当にすごいと正面から褒めるのです。誰かに向き合う時、その人の優れた部分を一番大きく捉えることができる人なのかもしれません。
「もうすぐ、新人大工も入ってきますね。」
「はい。味方になってくれますかね?」
「え?味方(笑)?」
「(笑)よくわからないですけど。」
緊張するとか、教えなきゃとか、手本にならなければとかそういうゴリゴリのエネルギーを見せないんです。上下関係の厳しい職人の世界で、後輩に「味方」っていうワードの選択が彼らしい。きっと頼れるお兄さんタイプの先輩ですね。

今は、どこに足をついても、どこに足を入れても、痛くて熱いのではないでしょうか。
だけど彼の中ではその苦しみも、腐ったり汚れたりしません。どんなに自分を苦しくさせるものでも、自分自身の優しさで上手く包む。苦悩や辛さを自分のなかでとがった固い物にしない、暴れまわらせない。彼の持つ独特の「柔ら」は強いです。先走って間違えて、悩みまくる暗い土の中でも、彼は正しく光の方向を感じて、いつか信じられないくらい綺麗な花を咲かせるのではないかとわくわくさせられます。

例えば、誰も思いつかないような所に、ちょっとした手すりが備えつけてあって誰かをそっと支える、そんな思いやりのある建物を建てる大工になるのではないかと思うのです。 そして、転ばなくてよかったねとふわっと笑うのではないかと・・・。

彼は、この業界ではなかなか得難いタイプの人なのではないでしょうか。

これから先、関わった人たちみんなが彼の味方になっていく気がします。

スタッフ紹介:→https://www.kousyou-kominka.com/staff/staff-5-4
もう既に3年目となりました。
辛いだけではないと実感して、できることが増え、輝きだしています。また、時に分厚く高い壁にぶち当たり、苦しい時もあると思います。だって、そういう世界だし、それを繰り返して腕の良い職人になるのです。
若い大工たちは、厳しさも辛さも、迷いも全て経験と技術に変えて、掛け替えのない毎日を過ごしているように見えます。
また、彼らの姿をお伝えしたいと思います。
工匠は、千葉県松戸市・市川市を中心に
自然素材を活かした古民家再生・リノベーションを専門的に手掛けております。
また、お客様のこだわりを実現する注文住宅も可能です。
いつまでも丈夫で美しく、愛され続ける住宅をご提供いたします。
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